![]()
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
|---|
HOME>きもののことを知ろう>フムフム(きものの衣替え)
さてさて、きものでも着てみましょう!と思った時「ん?」と悩むのが季節のことです。
着物の形は、一年中同じです。夏だからといってノースリーブやミニになるでもなし。(最近の浴衣なんかでありますが…)
「じゃあ一年中一緒なの?」
いえいえ、とんでもありません!しかも、ちょっとややこしいのです。
そうです。きものと季節にはと〜っても深い関わりがあるのです。
(このページの目次)
・季節と衣替え
・きものの衣替え
・帯の衣替え
・長襦袢の衣替え
・小物の衣替え
・羽織、コート
・衣替え色々
みなさん、「源氏物語」をご存じですか?
全部読んだという方でなくても、冒頭のこの一文には聞き覚えがおありだと思います。
「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。」
(何と申す天皇の御代であったか、お妃が何人もお仕えなさっている中に、それ程高い身分ではないが、誰よりも天皇のご寵愛の深い方がいらっしゃいました。)
いきなり何だと思われるかもしれませんが、ちょっとお付き合い下さい。 f ^ ^ *)
ここで語られています、天皇に大変愛されていた方というのが、「桐壺更衣(きりつぼのこうい)」、あの光源氏のお母さんですね。
「更衣」というのは、天皇のお妃の位の中の一つです。(上から「皇后」「中宮」「女御」「更衣」とありました。)
この「更衣」という言葉、他にも聞き覚えがありますね。
「更衣室」など、つまり「着替える」という意味なんです。
他の、お妃の位はお妃らしい名前なのに、更衣だけちょっと変ではありませんか?
そう、元々「更衣」とは、天皇の衣、衣替えを司る役職名だったんです。
それが、だんだんと天皇のお妃の位にまで変わっていった…そんなところからも、この頃の「衣替え」の重要さが推測されるんではないでしょうか?
この「衣替え」という言葉自体、『更衣→衣更え→衣替え』と変化していったものです。
日本は四季の移り変わりの本当に美しい国です。
この頃の貴族達は、梅の匂いを、秋風の気配を、月の満ち欠けを、雪の音を…あるがまま、いえそれ以上に敏感に感じ、何よりの喜びやそれに自分の心を映して生活していたのでしょう。
衣服や調度品に至るまで、季節ごとや月ごとどころか日替わりに近いような衣替えの決まりを作り、それをなぞらえて生活することで、より四季の移り変わりを愛でていたのだと思います。
茶道や華道の世界など、日本の文化といわれるものを振り返ってみて下さい。そのほとんどが、どれほど四季の移り変わりを大切にしているかに気付かされます。
今現在きものを着るにあたっても、まだ衣替えに関する決まりごとがあります。
現代の洋服文化の中で生活している私達にとって、それは少しおっくうで、不必要に感じるかもしれません。
でも、それはただ「暑いから」「寒いから」で着替えるといっただけではない、私達日本人の美意識そのものの名残りであったりするのです。
きものの魅力は、みなさんそれぞれに感じられるところも違うとは思いますが、きものを私達の文化としてとらえるならば、「きもの=季節感」といっても過言ではない程です。
「いかにして季節感を表現するか」それに心を砕いてきた先人の感覚がきものにはそのまま今も生きています。その心が、もしかしたらあなたの心をもっと豊かにしてくれるのではないかと思うのです。
なが〜い前置きのようになってしまいましたが、そのことを実感して頂いてから、現在残っている「きものの衣替えの決まり」を読んで頂くと、心持ちが違うのではないかと期待します。 (*^▽^*)ゞ
きものの形が一年中同じであることは、前記しましたね。
では、何を季節によって着替えるかというと、袷、単衣、薄物という、裏地の有無、生地の違いで分けられた3種を着分けています。
| 袷 | 10月1日〜5月末日(冬を中心とした8ヶ月間) |
| 薄物 | 7月1日〜8月末日(夏) |
| 単衣 | 6月1日〜末日、9月1日〜10日(袷と薄物の間) |
となっています。
「ついたちからまつじつ〜?細かすぎっ」なんて声も聞こえてきそうですね。
そうです。しかも、どんなに9月が暑くてみんながまだノースリーブを着ていても、薄物をやめて厚い単衣に替え…5月には半袖の人たちの中で冬と同じ袷を着るのです。
それが、今も残るきものの衣替えなんです。
…厳しいでしょう?
ですが、そこまできちんと守っている方はあまりいらっしゃらないと思います(ほっ?)。でも、これが今も生きている決まりであることは本当です。守っていらっしゃる方もいらっしゃいますしね。
でも、現在の気候との実際のズレなどもありますし、ちょっと着て出掛けるのにそこまで気にしなくていいんじゃない?という風潮から、気候に合わせて、一般的に許される範囲として「10日間前後」ぐらいは、ずれてもいいとされています。ただ、着て行く場所は選んで下さいね。
ご安心を。(じゃ単衣は省略、なんてこともできますね。)
京都でも、街着としてきものを来ていらっしゃる方を見ますと、最近はもっと崩していらっしゃるように思います。(連日30℃近い気温の9月に単衣をお年寄りがお召しになるなんて…自殺行為です。)
でも、正しいことを知った上で、本人の意志でそれを変えることと、知らずにしていることとは、全く違うと思います。みなさんにも、ぜひ「意志ある」素敵なきもの美人になって頂きたいと願っています。もちろん、「私は絶対に衣替えを守る!!」なんて強靱な意志をお持ちの方、本当に尊敬します!
その他、もっと細かい季節限定の生地の存在や、仕立てもいくつかありますが、ややこしいのでまた今度。
|
決まっている時期より、最近は暑い時期が長いように思います。文化として衣替えもなるべく守って着たいみやこですが、5、6、9、10月あたりは、実際「なんでやねん!」とつっこみたくなる辛い日も結構あります。(夏にきものを着る自体の大変さはここでは置いておきます…) |
帯の衣替えの時期は、きものよりも曖昧です。
その前に、「帯に季節があるの?」なんて方もいらっしゃるかもしれませんね。
はい、あります。
夏には夏生地(色々ありますが、とにかく透けた感じの生地や麻などです。)を用いた帯を締めます。
形(仕立て)は冬帯(袷の時期に締める帯)と同じで、夏だから帯芯を入れないとか、一重にするとかいったことはありません。同じつくりで、なごや帯、袋なごや帯、袋帯などがあります。
帯は、冬帯と、その透けている夏帯との二つに大体二分されます。
夏物のきもの(薄物)を着る間に、夏帯を締めるのはもちろんですが、単衣のきものにも夏帯を締めます。
その時期としては…
・六月半ば、きものは単衣で帯を夏物に先に替える。
・九月に入り、きものは薄物から単衣に替わるが、帯は夏帯のまま。九月半ばから、帯だけ冬帯に。
といった感じに、単衣の時期の半ばで替えます。
見た感じとしては、帯だけ先に季節を先取りした感じに見えます。
きものの衣替えが少しずつ曖昧になっている今、帯ももちろんそれに準じています。
また、単衣帯というものも存在しています。
博多献上などです。
これは、透けていないものでも単衣の時期はもちろん、夏の間もずっと締められます。
長襦袢にもきものと同じく、袷、単衣、薄物の差があります。
それを季節で着替えるわけですが、これもきもの程厳密ではありませんし、きものと全く揃えるものでもありません。
前記した通り、きものの衣替えの決まりは現在には少し厳しいものになっているといえます。
ですから、その分暑さ寒さの調節を長襦袢でしていいと思います。
だいたい、袖のふりの所しか見えないのですから。
といっても、この袖のふりのように「ちらり」と見える部分を大切にするきものではありますから、冬に薄物の長襦袢の袖が見えてる…なんてことまではやめましょうね。できれば、
・きものが袷の時に薄物はやめる。
・きものが薄物の時は薄物。
くらいを守ってもらえれば、後は大丈夫だと思います。
夏や、単衣の時期は、袖襦袢が大変重宝します。
汗をよく吸ってくれることや、暑い時期に着なければならない単衣のきものには、下の裾除けを省いちゃったり…。なんて荒技もできるんです。(大きな声では言えませんが。)
帯揚げ、帯締め、半衿にも夏物があります。
つまり、夏には絽や紗などの薄物のものを用います。
それらを衣替えの小物の3点セットと考えて頂いて、3つの季節がバラバラにならないように、一緒に衣替えして下さい。
小物を夏物に替える細かい時期は、色々いわれてはいますが、ハッキリとした決まりはありません。
ですので、分かりやすくてきれいなのは「帯と同じにする」という替え方です。
「夏帯には、帯揚げ、帯締め、半衿の3点セットも夏物に。」
これでOK。
「羽織やコートに季節もなにもないんじゃないの〜?寒い時に着るんでしょ」
…そうなんですが、羽織やコートには防寒だけでなく、「塵除け(ちりよけ)」の役割もあり、ちゃんと薄物のものもあるんです。
ほんの少し前まで、「帯つきで歩くなんて恥ずかしい」という考えが当然のこととして言われていました。
「帯つき」とは、上に何も羽織らず、お太鼓を見せている姿のことです。
今の私達にはちょっと考えられない感覚ですが、少し前まで、一年中みなさんが外に出る時は、羽織やコート(羽織が中心であったと思いますが)を着ていたのです。
よそ様のお家に上がる時は必ず脱いで、外の塵を中に持ち込まないようにしていたのですね。
今でも、お茶の先生なんかで、ちゃんといつも着ていらっしゃる方もあります。
というわけで、厳密に言うと、
もちろん寒い時期は防寒用の袷を。
3月の中頃から4月、10月から11月の中頃は単衣を。
4月の中頃から9月は薄物を。
…ということになります。
とはいえ、この暑い時期にきものを着ること自体が、驚きの目で見られる今日この頃。単衣や薄物の羽織やコートなどを見ることすら少なくなりましたね。
ですから最近では、3月4月頃に薄物のものを着て、それを「花見コート」などと呼んだりしているようです。
また、袷の羽織、コートを着る時期をこういう風にも言います。
「紅葉の便りを聞く頃に着て、桜の便りを聞く頃に脱ぐ。」(そろそろですよ〜という頃に、という感じ。実際に咲いたりする前。)
きれいで分かりやすい言い方ですね。
それから、雨ゴートは必然的に一年中着なければいけません。
紗の薄物もありますが、最近の合繊のものなどは、一年中着れて便利ですよ。
さて、長々と色々なお話をしてきましたが、このきものを着ること自体が特別なこととして見られがちな昨今。
「夏にまで暑いのに誰が着るかいっ!」とおっしゃらず(おっしゃいながら?)ここまで読んで下さってありがとう!
きものは時季の移り変わりを自分の姿で表現できる、本当に素晴らしいものです。
きものは自分自身が、暑かったり寒かったりするのに対処する為だけの衣服ではないのです。
きものや帯には、色々な柄(紋様)が描かれたり織り出されたりしています。もちろん時季を問わないものもありますが、洋服からは想像も付かない程たくさんの、季節感の表現があります。
たとえば、そろそろ桜が咲きそうな頃、桜をあしらったものを着て、実際に桜が咲く頃にはもう着ません。本物と重なることを野暮としたんです。
そんな風に、季節を先取りにすることが、きものの季節感の原則だったりします。(今はそこまで言いませんが。)
寒くなったから、季節が変わったことに気付くのではない、もっともっと敏感な季節感をもつこと、それがイコール「お洒落」なのです。
また、夏のきものには、見る人に清涼感をいかに与えるかということを考えられた色柄の工夫がたくさんされています。(水や秋草を表したり)着ている自分が暑くても、涼しい顔をして(重要!)見る人へ涼しさを提供する。
そういう敏感さや心意気こそが、きものの「粋」であり「おしゃれ」なんです。
そう簡単にできることではないですが、せめて…季節感をとても大切にしている方や、本当にわずかな期間しか着ることのできないような季節感を持つものをお召しになっている方をご覧になったら、「素敵!」と思ってあげて下さいね。それがあなたの楽しみにもなればいいなぁと思っています。
This page last update : 04/03/13